えごまについて

えごまにはα-リノレン酸という身体に良い油が多く含まれています。α-リノレン酸は人間が生きていく上で欠かせない油(必須脂肪酸)です。EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)を体内で作る原料となるのが必須脂肪酸です。それゆえに、えごまは「畑の青魚」と呼ばれています。

えごまに含まれる成分

ロスマリン酸

強力抗酸化力でアレルギーを抑制
ロスマリン酸(ロズマリン酸)は、ポリフェノール成分のひとつで、ローズマリーやシソ科の植物に多く含まれています。このロスマリン酸には、強力な抗酸化力があり、そのため、ロスマリン酸が持つ抗酸化作用を利用し、肌を保護する目的の化粧品もあるほどです。ロスマリン酸を含有するシソからの抽出物にはアレルギーを抑える効果があるとされ、花粉症対策に有効とされています。

β-カロテン

美容に重要なビタミン、体内酸化を防止
β-カロテンは体内でビタミンAに変化してビタミンAの働きをします。ビタミンAは目の網膜や口、鼻などの粘膜、肌、髪、爪などの機能を保つ成分です。
目が疲れる方、風邪をひきやすい方、美容が気になる方に重要なビタミンです。また、β-カロテンはビタミンAとしてだけでなく、抗酸化物質としても重要な成分で、身体が酸化されるのを防ぎ、生活習慣病の予防にもなります。

α-リノレン酸

EPA/DHAが悪玉コレステロール値を低下、生活習慣病の予防に
α-リノレン酸とは、体内で合成することができず、食品等から摂取しなければならない必須脂肪酸です。一般家庭でよく使われるサラダ油とは、ほとんどが大豆油、菜種油、コーン油、米油などを2種類以上混合したもので、オレイン酸やリノール酸の含有が多いものとなっています。ちなみに、えごま油のほか、α-リノレン酸が多く含まれている食品は、亜麻仁油しかないのが現状です。

体内に入ったα-リノレン酸は、EPAやDHAに変換されます。このEPAやDHAは魚介類(特にいわし、まぐろなど)の脂質に多く含まれることが判明しており、漁業白書(平成11年度)によれば、「EPAやDHAは、血栓を防ぐとともに血中のLDL(悪玉)コレステロール値を低下させ、脳梗塞、心筋梗塞などの血管障害を予防するほか、アレルギー反応を抑制する作用などがあります。さらに、DHAは、脳神経系に高濃度で分布し、情報の伝達をスムーズにするほか、脳の発達や視力の向上に関与している。」などの効果があるとされています。
厚生労働省が公表している日本人の食事摂取基準(2005年度版)では、生活習慣病の予防に重点を置く目的でα-リノレン酸などのn-3系脂肪酸摂取目的値を定めており、2010年度版においても、以下のような摂取目標値を定めています。厚生労働省によれば、リノール酸とα-リノレン酸の摂取について概ね4:1の割合での摂取を推奨しています。

えごまの歴史

縄文人の巧みなえごま利用

えごまと出会ったことで、灯りや強い火力の利用が可能に

えごまの原産地はインド高地やネパール、中国雲南省の高地とされており、紀元前一万年以上も前には、既に東南アジアに広く分布していたと推定されています。大陸からいろんなものが伝わってきたように、えごまも中国から韓国を経由するか、あるいは直接中国から日本に入ったといわれています。おそらく渡来人がこの種を持って、丸木舟などに乗って日本海を渡ってきたのでしょう。

縄文遺跡(福井の鳥浜遺跡・青森の三内丸山遺跡など)ではえごまの種実や根茎が数多く見つかっており、1万年~5500年前の縄文時代には、既に栽培されていた痕跡が国内で何か所か見られます。えごまは非常に生命力が強く、山間地や痩せた土地でも良く育ち、乾燥や湿気にも左右されにくい植物で、ある程度の気温があれば育てやすい植物であるため、当時の縄文人は、古代的な焼畑農法やあるいは住まいの傍らで栽培をしていたと思われます。

鳥浜遺跡では、土器などに焦げた痕跡があり、すでにえごまを油として利用する方法が発見されていたと思われます。当時は搾油技術はなかったでしょうから、おそらく粒を叩いて砕き、粒ごと利用していたのでしょう。また、麻と一緒にえごまの種が見られることから、乾燥した麻の繊維を芯材にして火を灯していたのではと想像され、縄文人の知恵や工夫が感じられます。

えごまと出会ったことで、灯りや強い火力の利用が可能になり、大幅な生活の進歩があったと思われます。日本におけるえごまの伝来は、地域的には東日本が中心で、北陸の沿岸部に流れ着いた渡来人が、徐々に内陸部や太平洋側に移り住んでいったようです。今でもえごまの栽培が多い場所(福島県や山形県、宮城県など)が当時(縄文時代から奈良・平安時代)も栽培の中心地であったと思われます。

暮らしを支えたえごま油

鎌倉時代から江戸時代に需要が増加、仏教の広がりとともに

平安時代初期に、山城国(京都)の大山崎神宮宮司が、えごまから油を絞ったと記された文書があるように、この時代から本格的にえごまから油を絞るようになったといわれます。戦国時代に美濃の斎藤道三が油売りで財をなして一国の城主になったことは有名ですが、この油はえごまの油だったといいます。
鎌倉時代から江戸時代には、えごま油の需要が一気に増加しており、日本全国に広がってきたのもこのころでしょう。

また、えごま油は灯明や護摩供養などに使われていたので、日本に伝来した仏教が、平安時代から全国にその信仰が広まったことと関連して、えごまの油の需要が全国に広まったともいえます。

真言宗や天台宗の古刹の周りには、えごまの油をお供えするために、付近の民がえごま栽培を行なっていた形跡が多く残っており、また中国や韓国には見られない油の利用方法(傘や雨合羽などの防水塗布剤、さらに建築家具の塗装、また現代にも続いている伝統食に見られるような料理方法)が、この時代に始まっています。

忘れ去られたえごま、現代によみがえる

健康食品・機能性食品としてのリバイバル

実をしぼってとった油は、昔は食用だけでなく灯りの燃料や傘・雨具などの防水塗料としても広く利用されました。この油にはα-リノレン酸という成分が多く含まれており、この成分をとっていると、血液をサラサラにしたりアレルギー反応を起こりにくくしたり、ガンの発生や転移を抑えるなど、現代病の多くに効果が期待されています。大豆やコーン、菜種ほどには大量生産されていないのでまだ割高ですが、大事に使えばちょっと油をとりすぎの現代の食生活の見直しにもなるかもしれません。